最悪だ。
いつものように洗濯機から衣類を取り出していると、びよーんと伸びた紐が見えた。
パンツの紐が他の洗濯物に絡まっているのかと思ったがそうではなく、洗濯機の穴に引っかかっていた。
何がどうなってこんな事になったのか、最初は意味が分からなかった。
もう夜だったので、事態を把握することは翌日に引き継ぐことにした。
翌日、よくよく覗いてみると、どうやら紐の金具が穴に入って抜けなくなった様だ。
紐をピンっと引っ張ってみると、穴の裏面に金具が当たるのが分かった。
今度は、上や下向きに引っ張ると金具が少し出てきた。抜けそうで抜けない。
どうしたらいい?
対処法
どうすれば良いのか調べてみると、経験者は一定数いるようだった。
だいたいどのサイトにも3つ〜5つの方法が書かれていた。
1、業者に修理を頼む
2、洗濯機を自分で分解する
3、紐を切る
4、洗濯槽をゆらす
5、熱湯をかける
6、ラジオペンチで引っ張る
など。
1の「業者に頼む」以外は、100%自己責任のもと行わなければならない。
最悪、洗濯機が故障してもそれは誰のせいにもできない。
さあ、どうするか。
業者に頼むのは選択肢になかったので、自力で抜くことにした。
紐を切る選択肢はない
1番簡単そうに思えた「紐を切る」を選ばなかったのは以下の理由による。
- お気に入りというほどではないものの、切ってしまった後に紐を新調しないといけないのは嫌だということ(パンツのゴムだけでは緩いため、紐なしでは着用不可のパンツである)
- 槽の裏に金具を切り落とした後に、洗濯機が壊れるのを恐れたこと(自力で取れる可能性があるなら洗濯機が壊れるリスクは排除したかった)
まずは家にあるもので その①
ラジオペンチで抜けたという成功談をいくつか見たが、生憎ラジオペンチは持ち合わせていなかった。
成功談の方法では、【金具にラジオペンチの先を入れて引っ張った】と書かれていたのに、私の頭の中でどう変換されたかは自分でも謎だが、【挟んで取ればいい】という考えになっていた。
家にあるもので挟めるものはコレ。
モンキーレンチ ダイソー220円。
金具の付け根を挟めさえすれば、穴と並行に引っ張って取れると思った。
洗濯槽に当たってカチャカチャ音がなるだけで、全くもって挟めない。
わずかに飛び出している金具にかすりもしない。
意味のない時間は早々に切り上げる。
家にあるもので その②
六角 セリアかダイソー 110円。
洗濯槽の中に顔を突っ込んで引き抜き作業を行っているのだが、紐を引っ張ると金具の先が斜めになっているのが別の穴から確認できる。
その金具の先を持ち上げて真っ直ぐにすれば、穴の縁に干渉されずに抜けるのではないか?と考えた。
別の穴から六角の細いタイプを挿し込んでみる。
六角を左右に動かし金具の先に当てようとするが、差し込んだ六角で金具の状態が見えづらい。
金具に当たる時もあるが空振り続きだ。
そうしているうちに、カチャンっと六角が落ちた。
ドキッとした。
まさか、六角まで穴の向こう側に落としてしまったのか、と一瞬絶望したが洗濯槽の底にあったのを見て安堵した。
恐ろしくなって六角での作業は終了とした。
ラジオペンチを買いにいく その①
家にあるものではお手上げだったので、ラジオペンチを買いに行った。
鍛造ラジオペンチ セリア 110円
先がカーブしたタイプも並んでいたが、成功談で見たラジオペンチはカーブしていなかったのでこちらを選んだ。
寒さの中、靴下も履かずにサンダルで買いに出かけた。
足の指は悴んでいたが、これで成功間近だという衝動に突き動かされていた。
ラジオペンチの先で金具の口を挟む。
挟めない。
(※そもそもサイドから挟もうとしている時点で間違いをおかしている)
ほんの少し飛び出している金具をグッと押し潰す。
空き缶を潰すように、潰して潰して細くすれば抜けるという思考で掴もうとするが、うまくいかない。
そこでやっと間違いに気づいてしまった。
成功談では金具の中にペンチの先を挿し込んでいた。
改めて正攻法でペンチを入れ込もうとしたが、ペンチの先が金具より大きい。
成功談のラジオペンチはもっと先が細く長かった。
ラジオペンチを買いにいく その②
早くこの作業を終わらせないと、何も手を付けられない。
見て見ぬふりができる掃除とは違う。
自分は何をやっているのだろう。
どうして最近こんなに不運続きなんだろうか。
今朝はスープ皿のカケを見つけてしまったし、レンゲを落として割ってしまった。
ここ1ヶ月、色んな面でうまく事が運ばず空回りしまくりである。
「星のせい」といういう人もいるかもしれないし
「感謝が足りない」からだという人もいるかもしれない
「運気の変わり目、前兆」だという人もいるかもしれない
そんな事はどうでもいいので、とにかく早くこの紐を抜いてしまいたい。
そんな事を思いながらダイソーへ走った。
もう失敗はしたくない。最細のペンチを2種類買って帰った。
セリアで買ったラジオペンチより先が細い。
まずは、より細いように見える細工用先丸ペンチをさしこむ。
歪に変形してしまった金具にうまく先が入らない。
潰してしまったので、最初よりも金具の出てくる量が少なくなっている。
先細ペンチに変えて穴の奥で金具にすりこませようとしたが、そう思うようにはいかない。
どうなったのか
金具と紐の間にペンチをさしこめる余白はなく、紐が脆くなっていくだけであった。
終いにはこんな姿になってしまい、今にも紐は千切れそうな状態。
埒があかないので力づくで引っ張る方法を取ることにした。
頭を下げた姿勢で長時間作業をしていたこともあり、頭に血が上り目眩もしていた。
もう冷静な判断ができる状態にはなかった。
紐を平行に握り、金具も真っ直ぐになっているであろう感覚を頼りに力いっぱいに引っ張る。
せーのっ。えいっ。
力が緩んだと同時にカランカランっと金具が落ちる音がした。
やった。抜けた。
やりきった感動で、カラダからもスッと力が抜けた。
握りしめていた紐を持ち上げる。
あれ、、、
金具が付いていない。
あれは金具が洗濯槽の後ろに落ちた音だった。
再び絶望が訪れたが、この作業から抜け出せた事は救いだった。
洗濯機はどうなったのか
カラカラと音がしたり、洗濯槽に引っ掛かったりして壊れたらどうしようと恐ろしかったが、空の状態で回してみた。
洗濯から脱水までなんの異常も見られなかった。
異常があれば、エラーが起きたり脱水不良のままで終わるなど、何かしらの異変が出るだろうと思い、次に洗濯物を入れて回してみた。
何事もなく、無事に洗濯は終わった。
落ちた金具がどこへいったのか。洗濯槽の下にずっと留まっているのか、排水溝に流れたのかはわからない。
反省点
結果、槽の穴には小さな傷がついてしまったし、紐もボロボロになった。
金具は後ろに落ちてしまったし、道具代に330円、時間と交通費も要した。
切ってしまうのが1番良かったように感じたが、最初からリスクをとることは出来なかった。
すんなり取れれば成功談を参考にやってみるのもアリだが、やはり業者に修理を依頼するのが精神衛生上も良いだろう。
なぜ引っかかったのか 原因 その①
穴の入り口は滑らかなカーブで広いのに対し、奥まった内径は狭く切り口が鋭い作りになっている。
槽の後から表に戻ることは簡単ではない作りであることが伺える。
なぜ引っかかったのか その②
洗濯ネットに入れていなかった
なぜ引っかかったのか その③
特別太めの金具だった。
パーカーなどについている紐はもっと細い金具だが、このパンツの金具は太い。
なぜ引っかかったのか その④
これまでこのパンツを洗濯するときはネットを使用していなかったのに、なぜ今回に限り引っかかったのか。
いつもは紐が結ばれた状態で脱いでいたので、洗濯もこの状態で行っていた。
それが今回に限り、紐が解けた状態で洗濯していた。
結ばれた状態ならば穴に入り込む余地はなかったかもしれないが、これだけ長さがある状態でグルグル回っていたのが原因だろう。
まとめ
洗濯機の穴に紐が引っかかったら、金具が引っかかったら、抜けなくなったら、どうしたらいいかというと、安心を買ったと思って業者に依頼するのが1番だろう。
それでも自力でなんとかしたい人は、成功談を参考に忠実に再現する方が良いだろう。
今回の私のように、独自性を発揮してはならない。
成功するには成功するなりの、失敗するには失敗するなりの理由が存在する。
振り返ってみても、二度と経験したくない時間だった。
洗濯をする時は、長い紐に気をつけて大切な衣類や洗濯機を守ろう。
追記
【後記事】その後の話である
↓↓↓
【洗濯槽の後ろに落ちた金具 その後どうなったか】